【感想】Eテレ こころの時代~宗教・人生~ ドリアン助川さん「積極的感受」

きょうお昼時に何となくチャンネルを合わせて、目が離せなくなり、最後まで食い入るように見てしまった、Eテレ「こころの時代~宗教・人生」ドリアン助川さん「積極的感受」の回。あまりにも心に触れるものがあって、思わずNHKに感想まで送ってしまった。

ドリアン助川さんと言えば「叫ぶ詩人の会」。私が大学生だった90年代にはかなり活躍されていたと思う。番組を途中から見たため詳細は不明だが、チャンネルを合わせたときには、おそらく「叫ぶ詩人の会」結成の前、ドリアン氏が表現者として生きることに憧れ、「当然自分は表現者になるんだ」と信じてきた一方で、周囲の人々に比べて「何を表現しても自分は人並み以下だ」という限界を感じ、行き詰まっていたエピソードが流れていた。

そんな思いを抱えたまま、偶然ナチスの強制収容所跡に行き、数日後に殺されることがわかっている子どもたちが残したアートを見て、涙が止まらなくなったのだという。そして「感じる」という力がまぎれもなく自分にある、とにかく感じたことを叫ぼう、と「叫ぶ詩人の会」結成に至ったということだった。

番組ではドリアン氏のその後の人生や挫折、現在の人生観、彼が今大切に考えている「積極的感受」の意味などを紹介していった。「積極的感受」とは何か、とディレクターが問えば「例えば松尾芭蕉のようなもの」だという。現代では誰もが経済の中で生きている。生産性や効率、稼ぎが重要視される。「それは続けてもらっていいんですが」と前置きしつつ(この前置きも良かった)、松尾芭蕉のように「ああ、感じた」「おお、感じた」という、このことが本来の生きる意味だというのだ。たとえ何も生産していなくても。

ドリアン氏が49歳からフランス語を猛勉強してまで翻訳に携わっている作家、サン=テグジュペリについても紹介されていた。 サン=テグジュペリは不朽の名作「星の王子様」の著者であり、パイロットでもあった。あるとき操縦していた飛行機が砂漠の真ん中に不時着し、ほぼ遭難状態の中、サン=テグジュペリは隕石を拾って「これは空から降ってきた星に間違いない!」と興奮する。このように、「遭難して、生きる死ぬもわからない状況下で、目の前の隕石に興奮している」状態も、ドリアン氏の言う「積極的感受」なのだそうだ。

終始ドリアン氏の言葉で語られているのだが、内容は非常に哲学的で「今ここ」「禅」的なものだったと思う。個人的に、現代は「生産性重視」の風潮が年々高まり、人間性を保つことと相反する領域に至っているようにさえ思える。そして「何かが違う」と思っても、 個人の力では軸を戻しにくい社会になっているように感じる。その中で、ドリアン氏のメッセージは、体験とつながっている強さでストレートに響いてきた。ドリアン氏のような考え方の方がいて、生きているという事実だけでも勇気をもらえた感じがした。たまたま拝見できて、非常に幸運だった。

最近テレビには幻滅することが多かったのだが、こんな良質な番組が地上波で見られるなら、捨てたものじゃないなとも思ってしまった。

調べてみると、ドリアン氏が2013年に上梓した小説「あん」は、樹木希林さん主演で映画化されて全国77館で上映、カンヌ国際映画祭にも出品されたんだとか。なんだ全然知らなかった。見る目のある人はそれぞれ表現したり、受け取ったりしているのに、自分はその流れから漏れていたんだな。自分の不明さを棚に上げて勝手に世の中に絶望しないで、体験し、感じたことを基にいろいろ表現していくのが良いんだなと感銘を受けて、このように長々感想を書くに至ったのだった。