【感想】ETV特集「緊急対談 パンデミックが変える世界~海外の知性が語る展望~」ジャック・アタリさんの章。”今の状況は私がポジティブ経済と呼ぶものに向かうとても良いチャンス”

2020年4月11日(土)のETV特集「緊急対談 パンデミックが変える世界~海外の知性が語る展望~」を録画して少しずつ観ている。

番組の情報はこちら↓
https://www.nhk.jp/p/etv21c/ts/M2ZWLQ6RQP/episode/te/PVVG5MVMGG/

3人めの「知性」は経済学者で思想家のジャック・アタリ氏。ロックダウンの続くパリから、テレビ通話でインタビューに応じたようだった。

とくに興味深かったところを抜粋。

【パンデミックが世界経済に与える影響について】
・最悪の事態を避けるためには最悪の予想をする方が良い。世界経済は1929年(世界恐慌)以降最悪の危機に陥っており、2008年の金融危機と比べてもはるかに深刻。世界経済の損失は GDP で20%に及ぶかもしれない。
・世界中で多くの支援が行われているが、それは結果を先延ばししているにすぎず、レストランやホテル、店舗、スタジアムや航空業界など、人々が集まることが予想される業種は60%あるいはそれ以上の影響を受ける。

【コロナ後の世界について】
最悪のシナリオは世界恐慌、失業、インフレ、ポピュリストによる政府の誕生、長期不況による暗黒時代の到来。最悪のシナリオが起こるとすれば、第1波の終息後、早く外出しすぎて第2波に遭遇し、経済に打撃を受けるということ。
・他にも非常に悪いシナリオが起こり得る。新しいテクノロジーを使って国民の管理を強める独裁主義の増加。例えば中央ヨーロッパでハンガリーなどの政府がしたようにパンデミックを独裁主義に向かうための口実にする。
・さらに、経済、健康、そして民主主義への脅威もある。

【緊急事態が民主主義に与えるインパクトについて】
・安全か自由かという選択肢があれば、人は必ず自由ではなく安全を選ぶ。それは強い政府が必要とされることを意味する。しかし強い政府と民主主義は両立し得るものだ。強力な政府を持ちながら民主主義でもあった、第二次世界対戦中のイギリスは好例。

【利他主義について】
・パンデミックという深刻な危機に直面した今こそ、他者のために生きるという人間の本質に立ち返らねばならない。協力は競争よりも価値があり人類は一つであることを理解すべき。 利他主義という理想への転換こそが人類のサバイバルの鍵である。
私は人類すべてがこの試合に勝てると考えている。今の状況は私がポジティブ経済と呼ぶものに向かうとても良いチャンスだと思っている。
ポジティブ経済とは長期的な視野に立ち、私が「命の産業」と呼ぶものに重点を置く経済。生きるために必要な食料・医療・教育・文化・情報・研究・イノベーション・デジタルなどの産業。生きるのに本当に必要なものに集中すること
・ 利他主義は合理的利己主義に他ならない。 利他的であることはひいては自分の利益となる
・  経済を全く新しい方向に 設定し直す必要がある。医療機器・病院・住宅・水・良質な食料などの生産を長期的に行うこと。多くの産業で大規模な転換が求められる
・ 人類は未来について考える力がとても乏しくまた忘れっぽくもある。問題を引き起こしている物事を忘れてしまうことも多い。過去の負の遺産を嫌うためそれが取り除かれるとこれまで通りの生活に戻ってしまう。人類が今そのような弱さを持たないよう願っている。
私たち全員が次の世代の利益を大切にする必要がある。誰もが親として消費者として労働者として慈善家としてそしてまた一市民として投票を行うときにも次世代の利益となるよう行動をとることができればそれが希望となる。

以下は私の感想。

キャスターの道傳さんがずばり質問していたが、アタリさんの言葉は3人の「知性」の中でもとりわけポジティブ。おかげで視聴後の気分も前向きになれた。ちなみにアタリ氏によればポジティブとは「 自らが試合に参加しうまくプレイできればこの試合に勝てるぞと考えること」なのだそうだ。

アタリさんの話だけだと理解しきれない文脈もあったが、道傳さんが質問部分でいろいろと補ってくださるので理解の助けになった。

「コロナ後の世界」というのは私にとって今一番興味があること。「いつ終息するか」とよりも興味があるくらい。(もちろんいつ終息するかはとても気になっているし、2月以来、公私ともにさまざまな状況に振り回されて疲れているし、いわゆるエッセンシャルワーカーの人たちの健康や医療崩壊も気になるし、早く終息してほしい!!と思って外出自粛など自分にできることは協力しているつもり。)
アタリ氏がコロナ後の世界を良き方向に進む鍵として「次の世代の利益を大切にすること」と語っていたのがとても響いた。

人類史も経済もよくわかっていないのだけど、資本主義なのか、グローバリゼーションなのか!? 近年はもはや「無理がある」方向に走ってきていたと思うのが実感だし、世界の潮流もそれを踏まえたものになってきていたんだと、うっすらながら認識している。

今回のコロナ危機では、世界中で医療資源が不足したり、 食料危機も予測されている。日本でのマスク品薄の一因として、中国の輸出規制があるとも聞くし(元々日本が発注したものが、輸出規制によって入ってこなくなっている)、食料自給率の低い日本はこれから心配。本質的な産業のサプライチェーンの見直しや、食料自給率の向上は今後必須だと思う。

私自身、恥ずかしながら今文章にしようとするとモヤモヤとなってしまうくらいの理解度の低さだが、コロナ危機があって「もっと理解して自分にできることをしなくては」という気になっているし、社会や経済の構造を改めて見直そうという人が増えれば、大きく転換するチャンスになるはずだとは思う。

アタリ氏の「私は人類すべてがこの試合に勝てると考えている」というポジティブさは、小沢健二さんの「うさぎ!」のどこかにあった「でもまあ、人々は勝つよね」を思い出した。困難な課題だし、忘れっぽいという弱さも人類にはあるのを把握したうえで、人が生来持っている思いやりや、連帯の力を信じているところ。

食料自給率のこと、産業構造のこと、政治のこと、いずれも自分が生きているうちに解決しない問題かもしれないけど、次世代のことを考えて、少しでもよくなるように行動していこうと思う。